おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

おっぱいを切り取った結果

ごきげんよう、前回の記事ではおっぱいを切ってそのまま歩いて家に帰ったおじさんです。
そのあとどうなったかをこれからお話ししましょう。とりあえず、家には無事に着いたよ!

多少は効いてたみたい…

鎮痛剤と抗生剤を、1日3回、1週間服むようにと処方されていて、合わせて鎮痛剤ももらいました。術後1時間もすると(手術のときの)麻酔が切れて痛くなってくるよ、ということは医師から言われたのです。

手術のときの麻酔もたいして効いてなかったけどな!と思ってたけど、術後2~3時間くらいすると胸部に鈍い痛みが「ずくずく」と現れてきました。ずくずく。

痛いのは厭だから、さっさと鎮痛剤を服みます。でも服んだ途端に痛くなくなる訳でもなく。

ベッドの上にすわった姿勢で、胸に枕と座布団を当ててぎゅっと押さえます。すると耐えられるくらいにまで痛みがましになります。しばらく……小一時間くらいだったかな? その姿勢でいたら「ずくずく」が小さくなったので、横になって座布団を抱えることにしました。

静かなのは何だか厭だったからテレビをつけていたのですが、手術の日は金曜日で、「ドラえもん」が映っていたのを憶えています。「ドラえもん」の放送が終わってしまう前に、おじさんは眠ってしまったようです。

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中2日で出勤

手術が金曜日、翌日は土曜日。仕事はお休みです。身体を切った翌日だから全然動けないだろうと思って、1日寝ておく心づもりでいたのですが、午を過ぎた頃から何だか元気になってきたような気がしてきたので、近所の商店街をぶらぶらと歩きに出掛けました。

おじさんもその頃はあんまりおじさんじゃなかったので、身体がとても元気だったのですね。それに、術後は歩きまわる方がいいようです。のちに知ることなのですが、その方が治りが早いのだそうです。

さらに翌日の日曜日は自動車を運転して出掛けられるまでに回復し、月曜日には通常通り出勤しました。おじさんが胸を切る手術をしたことは誰も知らないままです。

仕事では「胸より高い位置に腕を上げる」という動作が必要な場面もあり、それは多少痛くてひやひやしましたが、会社の一員でありながら一人で段取りして一人で作業できる仕事だったので、痛いとか怖いとかをできるだけ避けることもできました。

ヨシ!

手術から1週間後に病院へ行くことになっていました。抜糸のためです。診察室にいたのは執刀医とは違って、院長氏でした。院長氏はおじさんの胸の包帯を取って、ガーゼを取って、傷痕を見て、「ヨシ!」と言いました。

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手術はうまくいったのかな、と思いました。

思いますよね、「ヨシ!」て言ったんだから。

さて、下の写真が「ヨシ!」の手術からまる22年後のおじさんの胸です。

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おっぱいの下側に皮膚のしわのような、赤っぽい線が入っているでしょう。手術で切開した痕です。20年以上経っても傷痕が残ってるんだ。

……あんまり「ヨシ!」じゃねえなあ。

おじさんの失敗

おじさんね、早くおっぱいをなくしたかったから、焦って近所の美容外科医に駆け込んだのね。「おっぱいをなくせるなら何だっていい」って。それがよくなかった。浅はかだった。

手術って後々の人生を「生きていくため」にするものだから、術後も健康で元気に過ごせるように段取りしないといけない。おじさんみたいにテキトーにやっちゃ駄目なの。

「おっぱいを切るのが上手なお医者」てのがいるし、「傷が小さくてすむ手術の方法」てのもあるから、事前によーく調べて、そういう手術をしてくれる上手なお医者がいる病院へ行くべきだった。

性別適合手術でなくても、これから何らかの手術を受けようという境遇に立つことがあったら、みなさんはよく考えて、よく調べて、納得がいく手術を受けられるように、よりよくその後を生きていけるように、手を尽くしてください。

ま、この手術については、傷痕が残ったことと、「肥ってるからちょっと残しておいた方がいいよねー」とか執刀医が乳腺だの脂肪だのを全部切除してくれなかったために、大胸筋を発達させても「雄っぱい」になりきらなくてちょっとくやしいことくらいが難で、ほかに支障は出ていないからよかったんだけどね。