手術生活卒業後のおじさんは
前回のお話で、おじさんはやっとのことで一ト通りの手術を終えました。お読みいただいたように、最後の年は一年中、手術と入院でした。
さて、その予後をお話ししておきましょう。
ずっと痛い毎日痛い
ステント設置の手術の後、排尿時に痛みを伴うようになって、「ステントになれるまで仕方がない」と主治医から言われたおじさんですが、術後6年が経とうとしている現在も、痛みはあります。
ステントが設置されているのがち会陰部、オリジナル(陰茎形成術を受ける前)の尿道口と肛門との間の部分です。この部分というのは「すわる」という動作をするときに必ず圧迫される部分です。どうしても体重がかかりますからね。
固い場所にすわったり、やわらかい布団や椅子でも長時間すわると、圧迫でステントの辺りが痛くなります。すわっている姿勢から立ち上がったりすると「いたたたた」と言わなければならない痛みが発生します。
そんなですから排尿のときはもちろん痛いです。
痛みがひどいときは仰向けに寝るだけでも痛いことがあります。
すべてひりひりするような、ちくちくするような、「傷」の痛みです。
痛いのが当たり前、痛くない時間なんて僅かで、最後の手術から4~5年は毎食後にロキソニン1錠を服んで痛みを抑え、それでも痛いことがほとんどだったので1日2回、インドメタシン座剤を使用していました。
ロキソニン+インドメタシンでもなお痛い日も少なくなくて、内腿にロキソニンの湿布を貼ることもありました。
痛みは体調の良し悪しでも強くなったり弱くなったりがあるらしく、調子がいいときはあんまり痛くないこともあります。あんまり痛くないなら座剤を使わなくてもいいので、座剤は術後の時間の経過とともに少しずつ余るようになりました。
長時間の外出の際、たとえばおじさんは原付ツーリングが好きでときどき単車で遠方へ出掛けるのですが、そういうときは座剤を持って出掛けます。
自転車のサドルは固くて漕ぐときに会陰部にぐりぐりしますが、単車のシートはやわらかくて漕がなくていいので単車は乗ってもOKです。て訳で単車にはよく乗るのですが、暑い季節に出掛けると大変なのです。
座剤を使ったことがある人はご存じのことと思いますが、座剤は融点が低い物質に薬を練り込んであるので、熱で溶けます。体温で溶けて腸内から薬を吸収するようにできています。そして近頃の夏は気温が人間の体温近くになったりします。
そうするとですね、座剤を自宅から持ち出してもいざ使おうとする頃には液体になっていて座剤として使えなかったりするのです。痛み止めが使えないと痛いのを我慢しなければなりません。こういう困ることもときには起きます。
おくすりのおはなし
ロキソニン以外に漢方薬の柴苓湯と、ステントを設置しても排尿しづらいことがあるので尿道が拡張しやすいようにエブランチルが処方されていて、5年ほど服みました。
余談になりますが、ツムラの漢方薬はパッケージに番号がつけられています。柴苓湯は114番です。排尿を促す作用があります。結構いろんな診療科で処方されていて、たとえば1番は葛根湯。風邪引くと服むやつですね。内科で処方されます。16番の半夏厚朴湯は、おじさんは精神科で処方してもらったことがあります。
こんな感じで、広い範囲でたくさんの種類の漢方薬が処方されているので、おじさんの年令になると、同級生たちがだいたいツムラの何番かを服んでいます。
当ブログをお読みのみなさんの中にアラフォー以上の年令の人がおられたら、ご自分や周囲の人に確認してみてください。高確率でツムラの漢方薬を服んでいるツムラーがいると思います。ツムラの何番を服んでいるかでビンゴとかできるかもしれません。
さて閑話休題。
それでも排尿の具合がよくなくて、また手術か?と危ぶまれたのですが、エブランチルをハルナールに変えると復調したので、何とか手術回避。これがつい最近、2020年のことです。
エブランチルもハルナールも、主に前立腺肥大症などで尿の出が悪くなってきた人に処方する薬だそうです。尿道を拡がりやすくして排尿を促します。
泌尿器科では水をたくさん飲んでとにかくたくさん排尿しなさい、ということをたびたび言われます。特におじさんは陰茎形成術を受けて以降、尿道炎だの膀胱炎だのにしょっちゅう罹るのですが、そういうのもたくさん排尿することで罹患率を下げることができるのだそうです。
たくさん水分を通すことで腎臓やら尿道やらの泌尿器系を洗っちゃおう、ということなのでしょうな。だから、夏は水を飲むように巷でも言われていますが、泌尿器科では冬も水分摂取量に気をつけるよう、たびたび注意されます。
冬は喉の渇きを感じにくいこともあり、あまり水分を摂らなくなってしまうので、意識して飲むようにしなければなりません。
という、とても健康な人にはあまりおもしろくないお話でした。こういった薬とか体調の話に興味が出てくるのって、30代も半ばを迎えて以降だろうねえ。おじさんは学生時代から薬物の話は好きだったんだけど。化学とか。
2020年のおじさんの様子
こういった過程を経まして、ただいま現在この文章を書いているおじさんの状態はと言いますと、「だいたい元気」です。
乳房切除術の傷痕は術後20年以上が経つのにまだ残っていたり、腕の傷痕も触れると痺れる部分があったりしますが、それで生活が大きく阻害されているかと言えば、そんなことはありません。
腕の傷は、ちょっと気をつけてスキンミルクだとかハンドクリームだとか、その類いを入浴後などにつけておいた方がいい感じです。冬場は特に衣服の袖に触れるので脂が奪われてカサカサになって、ときどき出血することもあるので(痛くはない)、注意が必要です。
「痛いのが当たり前」だった尿道は、ステント設置後5年(2019年)くらいから痛む率が減ってきて、次第にインドメタシン座剤がいらなくなり、ロキソニンも服まなくて済むようになってきました。
まったく痛くない訳ではありませんがそれも気にならない程度で、ときどき体調によって「いたたたた」というくらいです。尿道炎や膀胱炎の頻度も少なくなってきたのでは……?
おしっこの出具合はスムースとは言い切れなくて尿線は相変わらず細いです。後遺症なのか年令のせいなのか、排尿後にちょろちょろと尿が洩れてきておパンツを濡らすので、また尿取りパッドを常用するようになりました。
尿洩れは健常のネイティブ男性でも中年期以降にはよく起こることなので、仕方がないことなのかもしれません。いまは「男性用尿取りパッド」なんて便利なものも販売されているので、ちょっと面倒なだけで特に困ることもありません。
持病のうつ病は、いまのところ安定しているものの、いつ具合が悪くなるかわからないのは相変わらずです。これも仕方がないやつです。生涯おつきあいしていかなくてはならないやつです。気長につき合いましょう。うつ病のおかげでできる仕事が限られてしまうのは、いまのところは仕方がないのですな。
痛かったり排尿できなかったり起き上がれなかったりものを食えなかったり、そういった一時のことを思えば、おかげさまでいまのおじさんは結構元気で平穏に過ごしています。いまがそこそこいい状態なので、すべていいってことにしましょう。
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