おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

ステントの提案

ごきげんよう、ネパール料理にハマりつつあるおじさんです。

いやはや、またもやすんごい痛い手術を受ける破目になったおじさんでした。何でこんなに痛いエピソードが増えていくのだ。

検査と称して、全身麻酔下でやるべき手術を簡易麻酔だけで敢行されてしまった後はどのようにことが進んだかのお話を、今回はして参りましょう。

カテーテルが2本の生活

狭窄した尿道をほぼ無理やりにこじ開けられたおじさんは、尿道口からと膀胱瘻と、2本のカテーテルが挿さった状態で秋を迎えておりました。尿道狭窄のはじめての手術が真冬でしたから、月日が経つのは早いものです。

身体にカテーテルが2本挿さっていて、そのどちらからでも排尿できるのですが、ちんちん経由よりも断然、膀胱瘻からの方がかんたん便利にできるので、おじさんは専ら膀胱瘻カテーテルを使って排尿していました。急いでいるときもささっと済ませられます。

狭窄した尿道カテーテルが通り、排尿できるようになったからOKだネ!という訳にはいきませんでして、後日再々々手術がしますということになりました。ただし、塞がったところを拡げるだけでは何度でも再発することがわかっていますので、再発しないようステントを設置する予定です。

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ステントというのは、脳梗塞心筋梗塞などでも使われるのでご存じの人も多いことと思いますが、血管だとか気管だとか腸だとかの身体の管状の部分で、塞がってはまずい部分が塞がらないように設置しておく、金属製の管です。

おじさんも実物を見たことはないのですが、現在おじさんの尿道の中に収まっています。ということは、この手術は無事に済んでいる訳です。しかし、おじさんの尿道が人工のものであることが、普通に手術するだけでは済まないかもしれないリスクを生んでいます。

というのも、ネイティブ男性の尿道にステントを設置した場合は、以前にもお話しした通り尿道の内側には粘膜があるので、設置したステントに粘膜が巻きついて固定されるのですが、おじさんの人工尿道には粘膜がありません。

粘膜がない尿道にステントを設置しても安定せずに、身体の動きによって設置位置がずれてしまうかもしれないのです。

これを解消する手段としては、口腔粘膜を採取・培養して尿道に移植するという方法があるのですが、それを行うのか、また、次の手術をK医師が行うのか別の医師に依頼してほかの病院で行うのか、今後考えていきましょうということになりました。

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当時は特に考えていなかったのですが、いま振り返ってみると、どうもK医師はこれ以上のおじさんの手術をしたくなかったんじゃないかと思います。

というのも2回目の手術以降、「もとの手術(陰茎形成術)をどうやったかがわからんからなー」、「もとの手術をしてくれた先生にやってもらうのがいいと思うなー」というようなことをK医師はたびたび口にしていたのです。「もうお手上げ」って言いたかったのではないでしょうか。お医者って、ほかの医者が手術した患部を手術するのって厭なものらしいし。

しかしのう。ほんとうはこんなことではいけないのだけど、おじさんももう一度タイへ飛ぶお金はなかったしのう。

ほんとうのことを言うと、こういったアフターケアも含めて病院選びはしなければならないのです。海外の病院で手術をするなら、術後トラブルが起きたときにきちんと治療できる医者を渡航前に確保しておくべきなのです。そうでないなら海外の病院で手術を受けるなんてこと、しちゃいけないのです。

これから手術を受ける人へのお願い

ここからちょっと脱線しますけども。

おじさんは陰茎形成術を受けたために、腕に大きな傷痕が残っています。おじさんはこれをみっともないとは思わないので、隠していません。夏などは半袖シャツを着ますのでまる見えです。「それは何の傷?」と訊ねられたら「性別適合手術の痕です」と答えます。

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▲買いものするときなんて傷痕を見せる姿勢になるんだよ。

これに非難を受けたことがあるんです。

性別適合手術を受けた人は腕に大きな傷が残るということが一般の人に知れ渡ると、同じ手術を受けたけど性同一性障害であることを伏せて、ネイティブ男性として世間に溶け込んで生活している人またはそうしたい人が、腕の傷痕から性同一性障害であることがバレてしまって生活しづらくなるじゃないか、と言うのです。

しかしですね、「性同一性障害であることを生涯伏せて生きる」ことを予定しているのなら、腕みたいな目立つ部分に大きな傷痕が残る術式は、予め選択肢から外しておくべきなのです。

陰茎形成術で使う皮弁を採取することができる部位は、何も前腕だけではありません。半袖シャツを着てもシャツで隠れている上腕だとか、下腹部や下腿を使う術式もあります。他者に傷を見られることで知られたくないことが知られる可能性があるなら、傷が残っても他者に見えづらい場所を使う手術をしてくれる医者を選ばなくてはなりません。

そういったことは手術を受ける前によくよく考えておくべきことだし、「陰茎形成術を受けると術式によっては腕に大きな傷痕が残る」なんてことはちょっとネット検索すれば誰でも知ることができる内容だから隠したところでほとんど意味はないし、手術した後でおじさんに文句を言われても「知らんがな」としか言えません。

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愚痴を言ってしまったようではありますが、よくよく憶えておいていただきたい。「手術を受ける前に充分に情報を収集・吟味した上で術式や病院を手術を受ける本人が決めて」、後々悔やむことも他人に文句を言うこともしなくていいようにしてください。自分で調べて、自分で決めて、自分の責任において行ってください。

おじさんを非難した人も、おじさん自身も、事前の情報収集と準備が甘かったのです。

性別適合手術に限りませんが、「手術が100%成功する」ということは、まずありません。術後には規模の大小こそあれ、必ず何らかの不具合が生じます。それに対応できる病院と治療費及び渡航費等は、手術費用に含めて予め用意しておきましょう。

これも以前にもお話ししたかと思いますが、性別適合手術はゴールではありません。むしろ性別適合手術が終わったところがスタートです。手術を終えた後にどのような生活をするのかのヴィジョンをきちんと見据えて、その上で術式と病院を選びましょうということは、重ねてお願いします。

次はステント設置手術

といったところで閑話休題

近日中におじさんはステントを尿道内に留置する手術を受けることになりました。それまでは、尿道と膀胱瘻の2箇所に挿入したカテーテルの衛生管理をしなければなりません。

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カテーテルが挿さっていても入浴はできますが、湯舟に浸かることはできません。シャワーのみ。浸からなくても入浴を済ませることは難しくはありませんが、やっぱりときどきはたっぷりの湯に浸かって「くはぁ」とか「え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛」とか言いたいですよね。

この頃になると腕の傷ぱっくりやら尻の傷やらはすっかり快癒しておりまして、気にせねばならないのはカテーテルの管理とこみ上げる尿意のみです。いや、こみ上げてきて堪えきれない尿意は、この頃にはほぼ起きなくなっていたのだったかな。

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