おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

おっぱいは手術で取れちゃう

ごきげんよう、ときどき即席ラーメンの粉末スープだけが余剰してしまうおじさんです。

さて、いよいよ性別適合手術についての具体的なお話をして参りますよ。そこに至るまでの手順だとか葛藤だとかというのはもちろんあるのですが、いまのところはそういうのは省いちゃいまして、いきなり手術に直面するお話です。

おっぱいを切り取る

f:id:oji-3:20200402151541p:plain

切り取っちゃうんです、おっぱい。

先にもお話ししました通り、おじさんは女性の身体を持って生まれてきました。だもんで、年頃になったらおっぱいがふくらんでくるんですな。いまもそうなんですが、おじさんは幼い頃からデヴでして、その分おっぱいのふくらみが目立ちはじめるのも早かったんです。小学3年生の頃にはませたガキ大将なんかに揶揄されておりました。

ガキ大将にいじめられたからおっぱいが厭になった訳ではありません。誰も何も言わなくても厭だったのです。成人してからもやっぱり厭で、筋トレしても筋肉はあんまりつかないのに乳房はふくらんでいる、というのがとても理不尽に思われました。

自分の身体におっぱいがついている。これが厭でたまらない訳です。だもんで、切り取っちゃいました。

切るのはかんたん、日帰り手術

f:id:oji-3:20200402212821j:plain

 地元の街に美容整形の病院があったので、そこで手術を受けました。手術費用は手術とそのための薬や設備の費用、アフターケアなどすべて含めて70万円。もちろん一括で支払えないのでローンです。病院がローン会社と提携していて、受付でローンの申込までしました。

手術は日帰りでOKとのこと。その病院では金曜日が手術の日と決まっていました。金曜日に手術を受けて、土日休んだら、月曜日から普通に仕事できるな、と考えて、手術を受けるなんてことは誰にも言いませんでした。

予約時間は13時となっていたので、当時ある会社の事務員をしていたおじさんはその日は昼まで出勤して、午後は早退させてもらいました。さて、職場から自動車に乗って、まずは自宅に帰ります。

なぜ、職場から病院に直接行かなかったか。「自動車では来ないでください」と予め言われていたからです。

おっぱいを切り取るということは、胸部を切開します。胸に大きな傷がつくと、腕を動かせる範囲が狭くなります。術後は「とても運転はできない」らしいです。ので、自宅から歩いて病院に行きました。

病院に行くと診察室に通されて、上裸になります。そこで執刀医がマジックを持ち出して、おじさんの胸にU型の線を右と左に各1本ずつ書き込みました。切開する線らしいです。緑色のマジックでした。そのまま歩いて手術室へ行くよう案内されます。

手術台はまるで十字架

f:id:oji-3:20200402212910p:plain

「はい、その上に寝て」

小さめのベッドのような手術台を指して若い医師が言いました。事前の検査なんて何にもなしで、上半身を脱いだだけの普段着のままで、手術台に乗ります。

指示通りに横たわると、医師は手術台から横に伸びる台を引っぱり出しました。真上から見ると十字に見えるような、両腕をのせる台が、手術台には折りたたみで装備されているようです。そこに腕を乗せると、紐で手首を縛りつけられました。

大変古い話で恐縮ですが、みなさんは『仮面ライダー』の第1作をご存じでしょうか。藤岡弘、さんが主人公・本郷猛/仮面ライダー1号を演じてらっしゃった、最初の『仮面ライダー』です。

そのオープニングで「仮面ライダー本郷猛は改造人間である。……」とナレーションが入るのですが、そのときの映像が仮面ライダー/本郷猛の改造手術のシーンなんですね。まるい台に手足を広げて磔にされた本郷猛の姿が映し出されるのですが、手術台に腕を縛りつけられたとき、おじさんはこれを思い出しました。幼い頃によく見てましたから。

さらには、膝の下辺りに砂袋のような重りを乗せられました。医師の言うところによると30kgあるそうです。何で重り……?と思うよね? この理由が後でわかっちゃうんだな。

腕と脚とを固定されて、手術台の両脇に医師が1人ずつ立ちます。何と2人がかりで手術してくれちゃいます(ババーン!)。まずは麻酔注射から。何と何と局所麻酔だヨ!

おっぱいの下部に沿って、左右とも4~5本注射したかな? その1本ずつが、痛いの。首の下にカーテンがつけられて、自分では胸が見えなくなっているんだけど、感覚としては「長ーい針をぎゅーっと深くまで刺して、さらにぐりぐりされる感じ」。

もー注射の痛みに耐えるだけで消耗した感じなんだけど、手術はこれからなのです。若い医師がレーザーメスを持ちます。レーザーメスは出血が少なくて済むのだそうです。さあ、切開!

といったところで、ずいぶん長くなりましたので、本日はここまで。次回に続きますよー。レーザーメスでおっぱいを切開されたおじさんははたしてどうなったのか。乞う次巻!