おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

山間のわかってる病院〔個人史21〕

ごきげんよう、子供の頃「お前がから揚げを食べないのはおかしい」という理由で病院へ連れて行かれたことがあるおじさんです。

半年の入院を経て退院したものの、おじさんはすっかり寛解した訳ではありませんでした。1年弱で再入院することになります。しかし再入院した病院が、近代的な病院なのに考え方が近代的でなかったという悪夢。

そのためにさらに具合が悪くなってしまったおじさんは、再入院した病院をさっさと退院して別の病院に再々入院したのでした。

という前回のあらすじですが、はじめて入院したちょっと遠方の病院は、以前とはちょっと様子が変わっていました。さて、おじさんの前途は。出戻りした病院でのお話のはじまりはじまり。

「わかってる」病院は有難い

以前お世話になったその病院は、おじさんが退院してすぐ後くらいに建て直しがはじまっていて、建物が新しくなったと同時に体制も新しくなっていました。1回めの入院のときは木造の部分もあったりして、その古ぼけた感じが「何か出そうな感じ」だったりしたのですが、すっかり明るく近代的な雰囲気に。

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その新しくなった病院におじさんは再び入院することになったのですが、おじさんの性別に関して病院側は既に知ってくれているので、こちらが何も言わなくとも「男子側」と「女子側」に分かれる病棟の、もちろん男子側に入れてくれました。

また、新しくなったことで大部屋だけでなく個室もいくつか準備されていて、おじさんはほかの入院患者との摩擦がないように個室をあてがわれました。しかも個室ではありながら個室料金を取られることがないという有難い仕様。

こんな風に、同じ精神科でもよくわかっている病院と全然わかっていない病院とがあったのです……というか、おそらく今も、おそらくここだけでなくほかにもあります。

精神科というのは、その思想や体制、知識の範囲や治療方針が病院ごとに異なります。すべからく「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」を遵守しているべきではありますが、問題なく遵法している病院もあれば正直「ギリギリ」な病院もあります。

だから、病院はよーく選ばないといけません。良心的な体制の病院であっても、単純に「担当医と自分が合わない」ということもあるので、「体制が整った病院の、自分にぴったり合った医師」を探し当てるまではドクターショッピングになりがちだったりもします。

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しかしながら、自分に合わない医師に受診するのはそれ自体がストレスとなって精神疾患には非常によろしくないので、よーく選ぶ必要があるんです。合わない医師で妥協したり我慢して受診したりしていると、おじさんの知人のように医者に追い詰められてオーバードーズ(薬物多量摂取)したり手首を切ったりして救急車で運ばれる破目に陥ります。

精神科で受診することを怖れる必要はまったくありませんが、受診してみて「自分と合わないな」と感じたらさっさと別の病院に移る身軽さは備えておいた方がいいでしょう。医者と患者とは対等な関係にあります。医者に盲目的に従ったり従わされたりしてはいけません。もちろん、これは精神科に限った話ではありません。

再びちょっと遠くの病院で

さて、再々入院。新しい建物の個室は冷暖房完備で静かでとても居心地がいい部屋でした。おじさんはどんなに親しい人でも24時間は一緒にいたくないというタイプですので、自分以外に人がいないというのがとても心地いいのです。

新しくなった病院は以前とは少し違って、いくつかある病棟のすべてが半閉鎖病棟になっていました。おじさんが前回入院したのは開放病棟です。

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開放病棟は、患者も面会者も出入り自由の病棟です。一般病棟と同じですね。閉鎖病棟は医師からの許可がないと患者も外部からの面会者も出入りできない病棟です。病棟と外をつなぐ扉は施錠されています。

閉鎖病棟は、普段は閉鎖(扉は施錠)されているけれど、出て行きたいときに「○○に行きたいです」と申し出れば、医師から制限されている人以外はすぐに扉を開けてもらえる病棟です。外部からの面会も、担当医から「面会しちゃ駄目」と言われている患者でなければすぐに許可されます。

でもおじさんはもともと出不精なので、ときどき売店に買いものに行く以外はほとんど外には出ませんでした。前回の入院話のときにもお話ししましたが、この病院の周囲にはわざわざ出掛けて行くような場所がないのです。周囲はみかん山と民家のみ。

みかんの産地なので、季節になれば周囲の山全部がみかん色になってそれはそれはきれいなのですが、二度目に来た頃はすっかり季節を外しておりましたしねえ。

コンビニエンスストアさえ2~3キロメートル歩かなければ見つからない立地です。前回の入院時にはそのコンビニもありませんでした。しかもコンビニで買えるものなら院内売店でだいたい買えます。行く理由がない。

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といった状況ですので、今回の入院もやはり「何もしない」をしてほぼ半年過ごしました。そうです。今回も退院までに半年かかったのです。寒い時期に入院して、退院したのは盛夏を過ぎてからでした。

しかし不思議なもので、「何もしない」をしていただけなのに、盛夏の頃にはやる気がちょっと出てきて、「鍛えなければ!」と思うようになってきたのです。それで毎日、昼下がりには散歩に出るようになりました。

散歩が「鍛える」だって?と鼻先で嗤う気分になりましたか。その辺をぶらぶら歩く散歩を想像するならきっとそうでしょう。確かに最初のうちはそういう「散歩」でした。しかし徐々にそうではなくなっていったのです。 

というお話を次回はいたしましょう。「何もしない」でチャージされたおじさんと、当時のできごとなど。次回もよろしくです。

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