おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

再入院と再々入院〔個人史20〕

ごきげんよう、一ト口、一ト箸、一ト掴みがでかいおじさんです。

前回はおじさんがはじめて精神科の病院に入院したときのことをお話ししました。男女別にわかれている病室や入浴時間についての病院側の対応などをご紹介しましたね。ついでにしたカミングアウトの話も。

お話ししたのは「最初の入院」についてです。実は入院は1回では済まなかったのですな。2回め以降にもちょっとしたトピックがあるので、お話しして参りましょう。

1回めの入院

突然動けなくなったおじさんはちょっと遠くの病院に入院して、半年経ってようやく退院したのですが、入院中にどんなことをしていたかというと、徹底的に「何もしない」ということでした。

以前にお話ししたかと思いますが、精神科病棟には持ち込み禁止のものがいくつかあります。鋏・剃刀・爪切りなどの刃が付いた道具はもちろん、鏡も駄目です。携帯電話は持ち込めないので、持ってきていたら看護師詰所預かりになります。

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おじさんが入院した当時にはスマホタブレットは存在しませんでしたが、こういった通信機器も電話同様、持ち込み禁止です。病棟の外と連絡を取れる道具は駄目なんです。

というのも、急性期や回復期の患者はやたら誰かと話したがる傾向があって、でも相手の迷惑を考慮できるほどの精神的余裕がないことが多いので、電話かけまくったりメールを間断なく送ったりしがちなんですね。そういうのを防ぐためでもあります。

ただ、おじさん入院当時はまだモバイル通信は未発達で、おじさんが持っていたノートPCは通信機能未搭載機種だからと最初の入院時のみ許可してもらっていました。この入院時に本を見ながら独学でHTML言語を覚えたのでした。

1日1回1時間に限りPC作業を許された以外には、特にすることがない……と言いますか、精神科に入院しなければならないほどの人というのは精神面が限界まで疲れてしまっている状態なので、何もしてはいけないのです。

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おじさんなんかは時間が空いていると「何かしていないと不安」な性質なのですが、これが既に病気の入口です。精神面の疲れを取るには「何もしない」のが一番です。入院すると「世間の人は働いているのに何もしないのは申し訳ない」なんてことを思ったりするのですが、看護師に言わせると「あなたの今の仕事は寝ること!」なんですな。

寝るのを仕事に、ただ毎日を過ごして半年。ようやく主治医から退院の話が出たのでした。

再発は何度でも

退院したから全快か、というと、そんなこたぁないのです。「入院するほどではなくなった」というだけなのです。だいたい、精神疾患が治癒するのはよほど早期発見・早期治療できたときくらいのものです。そうでないなら治癒はありません。

治癒したように見える寛解の状態になるだけで、生涯のお付き合いになります。ときに具合が悪くなり、ときに病いなんて最初っからなかったかのようになりながら、調子のよし悪しの波の中を生活していくのが精神疾患です。

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て訳で、おじさんは精神障害者手帳所持歴20年越えで、2021年で精神科に通いはじめて27年目になります。いまではほぼ寛解の状態ですが、最初期は平地あり谷あり谷ありという具合の悪さでした。

だから、はじめての入院を終えてから1年後には再び入院するのですな。しかし最初の入院地は遠かったので、今度は市内の病院にしてほしいと主治医にお願いして手配してもらいました。県立医大病院です。

当時、移転したばかりで建物も新しくデラックスだった病院は、住みよく便利なはずでした。しかし、のっけからこの病院はミスをするのです。誰が見てもスポーツ刈りのおっさんを女子部屋に入れてしまうのです。

女子部屋のおじさん

6人部屋で、ベッドは向かい合っています。前回の入院とは違って開放病棟なので面会の人もたくさん訪れます。おじさんのベッドは部屋の入口すぐで、入室する一般の人はみんなおじさんを見てぎょっとした顔をします。中には戸口の表札を見直す人もいます。……いたたまれねええええ。

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今回はおじさんは我慢せずにすぐに担当医に「男子部屋に移してほしい」と申し出ました。若い担当医は「気持ちはわかるけどね、大学病院では簡単にはそういうことはできない」とよくわからないことを言いました。

以前にも書きましたが、おじさんは女子トイレに入るとものすごく不審者になってしまいます。じろじろ見られるだけならまだしも、おじさんを見た途端に出口へ引き返す人もいます。現に女子部屋に入っているおかげで部屋入口で引き返している人もいるし。

という訳で入院部屋は女子部屋にされてしまったけれども、せめてトイレは男子用を使わせてもらわないとおじさん自身と周囲の人双方に不都合がある。その考えのもと、男子用トイレを使うようにしていました。

そうしたらばまたもや担当医から注意があって、「女子部屋から出て行った人が男子トイレに入るのはまずい」……最早や入院している方が制約があってしんどい状態。

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こういった次第で、おじさんは県立医大病院に入院してさらに症状が悪化してしまいました。ので、1箇月を待たずに自主的に退院を申し出て、改めて主治医に前回入院した遠方の病院を手配してもらいました。

入院して具合がわるくなってしまったおじさんは、再々入院でどうなるのか。続きは次回に。

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