おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

検査だって言ったじゃん!

ごきげんよう、気をつけて日を避けるようにしていたつもりだけどつるつる頭が灼けてきたおじさんです。まだらに灼けていやーん。

前回の記事では、尿道狭窄の3回目の手術は切開手術でしたというお話をしました。内視鏡手術を2回したけど狭窄がよくならなかったので、切って手術してよとおじさんが言い出したのでしたね。

切開手術をして「何とかくっつけました」と執刀医が言っていました。今回は、その後どうなったかのお話です。

3回目の退院の後

身体を切って中身を操作した訳だから、これで治ってくれるだろうと願っていた訳ですが、手術直後からどうも希望が薄い感じです。というのも、退院直後でありながら尿線が細いのです。1~2mm程度。そうめん~冷や麦程度?

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初回手術の後の尿線が1cm前後、うどんくらいだったことを思えば、正直「細いなー」と思うのですが、前に飛んでいるのでまあいいか、と思っておくことにしました。

「前に飛ぶ」ってどういうことかわかりますか?

以前にもお話ししたかもしれませんが、尿というのは尿道口から出た後は放物線を描いて便器なり地面なりへ落ちていきますよね? それは尿道口から出た尿が「前へ」出ているからです。

それを「当たり前」のことと思っている人はきっとすごく多いのだろうと思うんですが、実は当たり前でもなくて、おじさんのちんちんから出る尿は、まっすぐ前に出ないことも多いんです。

ガンマニアやミリタリファンの人は既にご存じかと思いますが、銃砲には「ライフリング」というものがあります。ライフリングは、日本語では「施条」とか「腔綫」などと呼ばれます。よくたとえに使われるのは銃身の内側です。

鉄砲の細長い部分、弾丸が通る部分ですね、ここを銃身とか砲身と言うのですが、ここは筒状になっていて、その内部を弾丸が通るのですね。その弾丸と接する部分にらせん状に溝が切られているのです。これがライフリングです。

ライフリングの役割の詳細については上記wikipediaの記事をご参照いただくこととしまして、銃砲の弾丸が「まっすぐに」「前方の遠くへ」飛んでいくのは、ライフリングがあるからなのです。

これも何度かお話ししていますが、ネイティブ男性の尿道の内側には粘膜があります。人間の尿道粘膜はライフリング状になっていて、だから銃砲が発射する弾丸同様、排尿された尿が「まっすぐ」「前へ飛ぶ」訳です。

しかしおじさんの尿道には粘膜がないので、「まっすぐ」「前へ飛」ばないこともあるのです。横に出たり真下に落ちたりすることも少なくないのです。

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「まっすぐ」「前へ飛ぶ」ことが確実なら立位排尿、即ち立ち小便ができるということはとても便利なことなのですが、尿道口から真横に出たりあるいは真下に落ちたりすると、おパンツやズボンを濡らしてしまってみっともないことになったり、小水を便器の外にまき散らしてしまって大迷惑だったりするので、それならおとなしくすわって排尿する方が安心なのです。

3回目の手術の後、立位排尿してみたら取り敢えず前に飛んで、尿線を確認することができたのですが、しかしこれがだんだんと前に飛ばなくなってきます。「飛ぶ」どころか、尿線が線ではなくなり、やがて「ぽたぽた」と滴下するようになります。あれれー?(声:高山みなみ) これ前に見たことあるぞー?

3回目の手術1箇月後

出ませーん。

尿線が細いながらスムースに排尿できていたのは最初の2週間だけ。次の2週間はぽたぽたとしか出なくなり、やがて尿閉してしまいました。ぽたっとも出ない。

そこで膀胱瘻が活躍する訳です。

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ズボンの前を開けなくてもカテーテルを引っぱり出すだけで立位排尿できてとっても便利!……なんだけど、前回お話しした通り、2週間に1回は病院で洗浄してもらわないといけなくてそれは不便。

お腹に常に内臓まで貫通した穴が開いてるのも怖いよねえ。いつもはカテーテルを挿していて塞がっていると言えば塞がってはいるのだけど。

おじさんとしてはずっと膀胱瘻でもいいかな、くらいの気持ちなのだけど、そうもいかぬということで、も一度検査をすることになりました。

検査って言ったじゃん?!

またもや膀胱鏡検査をすることになったおじさんは、総合病院の検査室に入りましたとさ。膀胱鏡検査っつーと、砕石位になってちんちんの先から管(内視鏡)をどんどん挿入されるやつです。今回の検査は検査技師ではなくK医師自らが膀胱鏡を操作します。

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前にも書きましたが、膀胱鏡検査は検査前に尿道口から麻酔剤を注入して、尿道の中を軽く麻痺させます。尿道の中に異物を挿入されると痛いから、痛くないように軽く麻酔をしておくのです。

胃カメラみたいに管についたカメラを細い通路に挿入して身体の中を見ます。尿道は一直線ではありません。身体ですからいくらかカーブして身体の奥へと続いていて、だからカーブに合わせて管を曲げて挿入していくのですが、ときどき体内の壁にぶつかることもあります。

そういうときは「あ、壁に引っ掛かったな」というのが、挿入されている側でもわかります。まったく麻痺している訳ではないので、身体の中を管が進んできているな、という感覚はあるのです。

引っ掛かっている程度なら「引っ掛かってるな」とか「ぶつかってるな」で済むのですが、挿入の仕方が速すぎたり強い力がかかっていたりすると、痛いです。しかし、おじさんの尿道尿閉するほど狭窄している訳ですから、膀胱までスムーズには通りません。

当然、行き止まり状になった部分にぶつかります。痛い。痛いので「痛い!」と声を上げます。どんどんぶち当ててきます。さらに痛いので「痛い痛い痛い!」と半ば叫びます。わざと言うまでもなく、声が出てしまうのです。痛くてたまらんのです。

ここで例の台詞が出てくるのです。「あぁ~、痛いねぇ~」。

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自身の膀胱鏡の操作で私に痛みが発生することがわかっていながら、どんどん管を突っ込んできてる訳です。痛い。あんまり痛いと身体が勝手に暴れるということを、おじさんはこのとき身を以て知りました。手足がぶんぶん動きます。どさくさに紛れてK医師を蹴っ飛ばしてやろうかと思いました。

どれくらい痛いって、おっぱい切ったときにほぼ麻酔が効いていなくて痛かった憶えがありますが、それに次ぐ痛さです。

小一時間も尿道の中をあれこれされて激痛に悶絶した末、おじさんは10年ほど治まっていたパニック障碍の発作を起こしてしまいました。具体的に言うと、泣きながら過呼吸です。

この病態って精神科で勤めたことがないとわからないらしく、検査室に看護師は3名ほどいましたが「どうしたの?!」と訊ねられるばかりでこれと言ったご対処はありませんでした。パニック発作に対してできる対処ってないんですけどね(治まるまで安静にして待つしかない)。

最終的にはもちろん膀胱鏡はするすると尿道から抜去された訳ですが。

K医師が仰ったことは「通ったよ、入院しなくてもよくなったよよかったねえ」。狭窄していた部分に膀胱鏡のガイドワイヤーを通して、拡張してくれたようです。

て、それ手術でしょう!
全身麻酔下でやることでしょう!
それを検査用の軽い麻酔だけでやってしまったでしょ先生!

痛くて当然じゃないか(げっそり)。検査だって言ったじゃん……出産の痛みを「鼻の穴から西瓜を出すよう」と言ったりしますが、このたびのおじさんの無理やり検査は「尿道にゴーヤでも突っ込まれているよう」な痛みでした。

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で、「入院しなくてもよくなったよよかったねえ」などとK医師は仰ったけれども、検査中におじさんが暴れるものだから一応、麻酔をいくらか追加してくれていたらしく、「麻酔したから一泊して行きな?」て言を覆しなさいました。

「いや、すぐ帰ります」とおじさんは3回は入院を断ったのですが(だって検査だって言われて来てるから入院の用意なんて何もしてないし)、結局のところ急遽入院させられてしまいました。普段着で寝ることになりますよね。窮屈。

翌日は午前中から法事(実父の十三回忌)に出なければならなかったのですが、遅れていくことになりました。つか、法事そのものには出られなかったよ。

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