おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

ひとまずまずまず一段落

ごきげんよう、一度汗をかきはじめるといつまでも身体がしっとりしているおじさんです。

同じ年のうちに尿道狭窄を5回繰り返したおじさんは、この年2箇月に1回入院していました。自由業でよかった。ベッドの上でもできる仕事をしていてよかった。上半身が元気なら仕事できる職業なので、それだけは助かったなーと思っていました。

さて、何度拡張しても繰り返し狭窄してしまうおじさんの尿道をどうしてくれようかと執刀医のK医師が思案した結果は、「尿道ステントの設置」でした。

これで駄目なら駄目です

狭窄した上に段違いになっているおじさんの尿道。そこを無理やり拡張してカテーテルを挿入しています。カテーテルは膀胱まで挿入していますから、尿道カテーテルからの排尿は滞らないはずです。しかし、検査の振りをした強行手術の数週間後、出なくなったのです。

同時に膀胱瘻も設置していましたから、尿道カテーテルから排尿できなくなっても膀胱瘻から排尿できるのですが、一生お腹に穴が空けておく訳にはいきませんから、尿道からスムースに排尿できるよう治療せねばなりません。

という訳で、ステントの設置に踏み切るのです。ステントの設置については以前にお話しした通りです。

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狭窄部と狭窄部に橋渡しをするようにステントを設置するのですが、その位置が膀胱にずいぶん近いので、どう留置しても尿道口側へとすべってずれてしまって、ステントの一方の端が尿道にできている空洞の中に落ち込んでしまうのではないか、というK医師の見立てです。

上手に手術してもステントはずれてくるだろうし、粘膜がないから定着も難しいだろうし、これで駄目ならやりようがない、という……つまり、だいたいうまくいかない宣言です。いや、そんな予言いりません。

という感じに、人工尿道の治療は難儀なのですね。陰茎形成術をこれから受けようという人はこういうことも覚悟しておいてください。

つつがなく退院

ステント設置手術は、おじさんが総合病院の泌尿器科で受ける5回目の手術です。2月にはじめて内視鏡手術を受けてから5回目で、季節は早くも冬、師走の風が吹いていました。季節が一巡しましたよ。

5回目の入院ともなるとおじさんもすっかり慣れていましたが、病院側もそうなのか、今回の入院ではこれまで毎回していた尿測が省かれて、しかも日曜日に入院してくださいとのこと。あら楽だわ。

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内視鏡とか切開とかステント設置とか、手術の内容は違っていても、患者であるおじさんがやることは毎回同じです。緩下剤や浣腸でお腹の中をきれいにして、手術台の上で点滴と吸引で全身麻酔をしたら直ぐに眠ってしまって、目が覚めたら手術は終わっているのです。

今回の手術がこれまでと違ったのは、これまで4回の手術はいずれも術後に会陰部(尿道口と肛門の間辺り)に鈍痛があったのですが、これがない。そして、術後の排尿時に感じていた狭窄部にできた空洞が無理に押し広げられるような感覚がなかった。これまでの手術と違う感覚は、これまでとは違う結果を期待させました。

従来通り3日間、抗生剤を点滴して、4日目に尿道カテーテルを抜去。5日目に退院です。膀胱瘻は万が一のためにまだ温存。お腹からカテーテルを生やしたままの退院です。

尿道には形状記憶合金製の針金をコイル状に巻いたステント、お腹には穴を開けてカテーテル。そんな状態で年越しをしたのでした。紅白歌合戦も見たし年越しそばも食べて、「いつもの」年越しでした。

年始から痛い

手術から2~3週間経ったでしょうか。年明け間もなく、排尿時に痛みが発生します。会陰部辺り、尿道のおそらくステントが留置されている部分がひりひりと痛むのです。尿道の内側がすりむけていて、そこに尿が通るのでしみる。ちょうどそんな感じの痛みです。

排尿のたびに痛くて、結構な強さの痛みです。おそるおそる排尿して、ステント辺りを尿が通過すると「いたたたたた!」と声が出てしまうほど。声を出さないと耐えられないくらいの痛みです。想像できる? 内臓がすりむけている痛みって。

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年始第1回の通院で主治医に訴えてみたところ、「慣れるまで仕方がない」とのこと。身体に異物が入っている訳ですから、痛みだの異物感だのがあって当たり前ということです。入れ歯や差し歯、眼鏡やコンタクトレンズなんかもそうですよね。これらはつけ外しができるけど。

慣れたら異物感や痛みは薄れるだろう、という主治医の意見でしたが、最後の手術から6年経とうとしている現在もまだ慣れていません。ましにはなったけど、痛いヨ。

でも、最後の手術から1年ほど前に急にはじまった切迫性尿失禁によく似た症状は、この頃にはなくなっていました。手術のおかげなのか、そのほかの要因があってのことなのかは、いまとなってはわかりません。

しかしとにかく、「いつおしっこが出てしまうか自分でさえわからない」という差し迫った心配を常にしていなくてもよくなったので、精神的にずいぶん楽になりました。おむつもはかなくて大丈夫です。

かなり激しい痛みを伴うものの、したいときにしたい場所で排尿できるのだから、有難いものです。

穴は放置

最後の手術から5週間後、年が明けて初めての通院日に、膀胱瘻カテーテルも抜去しました。久々の身体から1本も管が出ていない状態です。2週間おきに膀胱の中を洗浄してカテーテルを交換するというケアを必要としてきましたが、それももうおしまいです。

おしまいならどうするか。まず、おもむろにカテーテルを膀胱瘻から引っこ抜きます。膀胱瘻というのは、何度か説明していますが、恥骨の上3cm辺りに皮膚から膀胱まで貫通するように空けた穴です。直径8mmくらいの穴を空けて、そこに管を突っ込んであるのです。

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カテーテルを抜いたら穴の上にガーゼを当てて、サージカルテープで貼りつけて、おしまい。ガーゼを当てる理由も傷(穴)の保護ではなく「おしっこが洩れてくるといけないから」。そんでもって、当日の入浴も可。

「穴からお湯が入ったりしないの?!」と思うでしょ? 大丈夫らしいです。おじさんも半信半疑でお風呂に入りましたが、何も起こらなかったから多分湯が入ったりはしなかったんだと思う。入浴後はガーゼなしで過ごしましたが、中身が洩れることもなく。

穴が空いてるのに放置です。それでも1週間もすればそれも塞がるのだから、人間の身体ってすごいね。

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