おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

身体に管が何本も

ごきげんよう、毎日筋トレすると3日目に立ったまま眠ってしまうので隔日にしているおじさんです。

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陰茎形成術を受けたはいいが、予後がすこぶるよろしくなくて、とうとう尿閉にまでいたったおじさんは、尿道狭窄(断裂)治療のため、入院することになりました。狭窄を手術で治すのです。今回はそのお話です。

泌尿器科で個人史…

おじさんが住んでいる街のには2つの大きな総合病院がありまして、そのうちの一方に入院しました。なぜそちらを選んだかというと、主治医がその病院出身でつながりがあるのと、その病院の泌尿器科部長は僅かながら性同一性障害の智識がある人だったのです。

陰茎形成、つまり人工の尿道をつくって、それを生まれ持った尿道に接続して長くする手術なんて、普通の泌尿器科では行いませんから、陰茎形成術について患者(素人)が医者に説明をしなければならないというみょーちきりんなことが起きてしまったりするのですが、それは免れた訳です。

手術の概要だけでも知った医者に診てもらえる方が、一から説明しないといけないよりはずっとましです。医者には医者なりの理解と治療への活かし方があるでしょうから。

しかし、その医者に――K医師としておきましょう、はじめてお会いしたときに「いつから?」と訊かれて、術後に排尿がスムースに出来なくなった話をはじめたら「違う、性別について、いつから……」と個人史を求められたのにはびっくらこきました。

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性同一性障害の診断・治療の初っ端にですね、精神科のお医者に「個人史」(自分史)という、幼い頃から自分が考えていたことや性別についての認識・経験などを話したり、あるいはあらかじめ書面にしたものを渡したりするんです。それも診断の材料になったりするんですね。

だから、性別適合手術を望む人や済ませた人にはおなじみのものではあるんですが、よもや既に10年以上も診断済みで性別適合手術も戸籍上の性別訂正もすっかり済んだおじさんが、泌尿器科で個人史を求められるとは思ってもみなくて、びっくらこいた訳です。

個人史ってかんたんに話せるものではなくて、性同一性障害の診断・治療の際には、少なくとも3~4回はかかって聞き取り調査を受けることになります。かなり詳細に書面にして渡しても、それを見ながら診察の1回分は聞き取りに費やされます。

その経験があるので、かなりざっくりとした個人史をお話ししましたが、それは泌尿器科の治療にも尿道狭窄の手術にも何ら関係がないんですな、実は。

入念な準備とあっさり手術

総合病院の泌尿器科でも改めて膀胱鏡検査と、血液検査、心電図、心肺機能検査などをして、手術の日取りを決めました。金曜日です。3日後に手術です。

というのも、K医師の手術日が月曜日と決まっていて、その前日には入院していないといけないのですが、前日・前々日は日曜日と土曜日でお休みなので、金曜日のうちに入院しておいてくださいということなのです。

金曜日の夕食前に入院して、普通に食事して土曜日の夕食から術前食に変わって少しずつ食事から固形物が減っていきます。前夜に下剤を服み、当日の朝はさらに浣腸をします。お腹の中をすっからかんにして手術に臨むのです。

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手術前は元気なのですが、手術室へはなぜか車椅子に乗せられて行きます。手術室に入るときに氏名・年令・これから受ける手術の理由(疾病名)を訊ねられるので、口頭で答えます。患者を取り違えないための手続きですね。

手術室へ入ると自力で手術台に上り、仰臥すると心電図つけられたり点滴のルート取られたりというのは、性別適合手術のときと同じです。点滴に麻酔剤が入るときに教えてくれるのは、タイではなかったかな。麻酔が入るとすぐに眠ってしまって起きたら手術が終わっているのも同じです。

麻酔から覚めたのは病室のベッドで、酸素マスクと心電図、点滴はついたままです。下腹部に鈍痛があって、尿道カテーテルがつながっていました。

実はおじさんの身体に挿さっているカテーテルは1本だけではなかったのです。

ボーコーロー

ちんちんの先から尿道経由で膀胱までバルーンカテーテルが挿入されています。そのほかに、へその下3cm辺りにも挿さっています。お腹に膀胱まで達する穴を開けて、そこにカテーテルを突っ込んであるのです。この穴を「膀胱瘻」と言います。ボーコーローです。ホイコーローとは違います。

膀胱瘻は、尿道経由で排尿できないときにお腹に開けて、そこから排尿するのです。バルーンカテーテル尿道に挿し込まない方の一端は写真のようになっていて、黄色いキャップを外して下に向ければ排尿できます。

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執刀医のK医師によるとおじさんの尿道は「思っていたよりも大変なことになっていた」そうで、「保険」として膀胱瘻はつくられたそうです。尿道の手術がうまくいっていなかったら膀胱瘻から排尿しましょう、ということです。

この膀胱瘻側のカテーテルにつけるキャップがQOLを左右するんですわ。

 というお話を、次回はしましょうかの。ホッホッホ。

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