おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

〈閑話〉声と毛の話〔個人史11〕

ごきげんよう、「一人外食」は全然苦ではないのでたまには行きたいなと思いつつ、行く機会をほぼ逸しているおじさんです。食事だけのために出掛けるのが面倒なんだもん。

前回は、性別移行のお話をしはじめておりましたね。引き続き、というところですが、ホルモン注射をはじめてから知ったこと・体験をまだ書いておりませんでしたので、そのお話をしてから先立つもののお話に移りたいと思います。お付き合いくださいませな。

ホルモン剤と声の話

ホルモン剤を身体に入れると表れる変化のうち、真っ先に出てくるのは声と毛でしょうな。少なくともおじさんはそうでした。

最初、おじさんは注射ではなく、薬局で購入できる「中年以降もこれで元気!」みたいな男性向けの錠剤を服んでいました。サプリメントではなく、薬局でないと買えない医薬品扱いの品です(品名失念)。

そのような錠剤もテストステロンを多く含んでいるので、当時は注射の代用品によく使われていたのですな。現在ではこういうのを使う人もあまりないのだと思いますが。

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▲イメージ画像

それを服んで3箇月くらいかな? その間に2週間に1回50mgという微量でしたが、注射も開始しました。その頃のおじさんは事務の仕事をしていて、電話を取ることもあったのですが、取引先のお馴染みさんに「風邪ひいてる?」などと言われ出したのです。変化の幅はたいしたことなかったのですが、声変わりをしはじめていたのですな。

それから半年もすると、自宅の電話では「奥さまはおられますでしょうか」なんてことをたびたび訊ねられるようになったので、ほぼ男声になっていたのだと思われます。

しかし、ネイティブ男性の変声期のように、短期間で目覚ましい変化があった訳でもなく、じわじわーっと少ーしずつ変わっていったと言うか。自分では変わったのか変わっていないのかわからない変化の仕方です。

カラオケなど歌うのが好きなみなさんは変化に気づきやすいのかもしれません。おじさんは人前では一切歌いたくない人で、かつカラオケに誘われても断っちゃう人なので、余計に変化の実感がないのかもしれませんね。

ホルモン注射と毛の話

さて、もうひとつの変化、毛の話です。男性ホルモン即ちテストステロンを身体に入れると体毛が濃くなる、というのはみなさんご存じのことかと思います。では、「体毛が濃くなる」にはいくつか種類がある、ということはどうでしょうか。

一ト口に「濃くなる」と言いましても、毛がどうなるのかに言及したものにふれたことが、おじさんはありません。ここではおじさんが体験した「濃くなる」を書き残しておこうと思います。

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▲イメージ画像

まず、毛が「増える」。新しく毛穴が増えるのか、これまで使われていなかった毛穴が使われるのかわかりませんが、毛の密度が高くなります。いままで生えていなかったところに毛が生えてきますから、毛は濃くなります。

それから、毛が「太くなる」。以前よりも毛の一本一本が太くなるので、全体的に濃く見えるようになります。

そして、毛が「長くなる」。従来から生えていた毛がもっと伸びて長くなるのです。毛足が長くなって、全体として濃くなります。

この3つを総合して「濃くなる」と言う訳です。これらの変化はこの順番に起きる訳ではありません。また、3つ別々に起きるとも限りませんし、3つ全部起きるとも限りません。順序組み合わせ的なものは個体によるものと思われます。

さらに頭髪に限っては「細くなる」「生えなくなる」というのもあるんですわ。おじさんはつるつる坊主に剃っているので目立ちませんが、やっぱり額の生え際が後退してきています。もともとが剛毛だったので細くなっているかどうかはわかりづらいのですが。

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▲イメージ画像です。

ホルモン剤を摂取しはじめたトランス男性はすね毛の成長をとても気にしますね?
トランス男性のみなさんはトランス男性同士ですね毛を見せ合って毛の成長報告をし合ったことはありませんか?

これも人によるのだと思いますが、おじさんのすね毛は写真に写るようになるまで5年かかりました。薄い体毛って写真や鏡に映り(写り)にくいんだよネ。おじさんの場合はすね毛よりも腕の毛の方が濃いです。

一番困ったのは性毛です。お股の毛ですね。男性ホルモン剤でこの部分の毛ももちろん濃くなります。

ホルモン剤の摂取をはじめるまで、おじさんはジーパンユーザーでした。デニムのパンツですね。丈夫で動きやすくてそこそこお洒落でもあるので、重宝していました。が、ジーパンというのはゆったりサイズでも割りとタイトなんですよね。身体にぴったりしていて、生地は硬めです。

すると。ホルモン剤で太く成長して密集した毛が、身体の中でも特にデリケートな皮膚に押しつけられます。その状態で動きまわると、皮膚と毛が擦れます。1日仕事をして動きまわった後に風呂に入るとですね、毛で擦れたお股がひりひりして飛び上がるほど痛いのです。

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それまでそんな経験をしたことがありませんでしたから、おそらくホルモン剤で毛が成長したせいです。あんまり痛いので、デニム素材のパンツはそれ以来はかなくなりました。現在は主にチノ素材のものをはいています。痛くないです。これはめずらしい体験だったなあと思って、語り種にしています。

あと、注射をはじめてから10年ほど経って気づいたのですが、おじさんは肩や上腕にも淡く毛が生えるようになりました。同じ頃から血も濃くなってきて、主治医から投与量を減らそうと提案がありました。内性器摘出も済んでいるし少量でよかろうと、現在はエナルモンデポー125mgを3週に1回のペースで注射しています。

余計なこと言った面接

さて、割り込んできたホルモン剤のお話はおしまいとしまして、やっとお話を戻します。先立つものを確保するために、おじさんは当時勤めていた会社が残業禁止になったのを機にアルバイトに出ることにしたおじさんは、会社と自宅の途上に中継所がある運送会社の仕分けの仕事をすることにしました。

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アルバイトそのものは学生時代にもしたことがあるのですが、このときはじめてすることがありました。「男性としての」就労です。このとき既にスポーツ刈りだったおじさんは、何も言わなければ相手が勝手に男性だと思ってくれるという状態でした。

日中勤めている会社は「世を忍ぶ仮の女性」として働いているのにスポーツ刈りってどゆこと?!

と思った人もおられるかもしれません。これにもちょっと愉快なエピソードがありましてな。それについては次回にお話ししましょう。今回はほとんどホルモン剤の効果と毛の話でしたな。うそ予告になっちゃってごめんねーん。

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