おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

出たり出なかったり

ごきげんよう、いまだにリリー・フランキーさんと吉田鋼太郎さんを見分けられないおじさんです。

性別適合手術でちんちんをつくったはいいけど、排尿のコントロールが利かなくなってしまった、というお話を前回までしていました。おじさん大ピンチです。

しかしピンチはこれで終わりでは全然なかった。次に何が起こるのか。続きをどうぞ。

いつ出てしまうかわからない生活

尿意が来たら慌ててトイレに走りつつ、ダイレーションのカテーテル尿道から抜き取らねばならない毎日を過ごすおじさん。それは昼夜を問いません。

眠っていても尿意を感じたら「うーん、眠いから朝まで我慢する……(ムニャムニャ)」とか言ってる場合じゃない。早く便器の前に立たねばその場で全部出てしまうのだから。

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床は濡らしても布団を濡らす訳にはいきません。何しろ換えがない。眠るのもひやひやものです。おじさんはうつ病由来の不眠があって、以前からあんまり深く眠れない人でしたが、さらによく寝られない生活になりました。

ひやひやしながら寝なければならないのも厭なので、暑い季節には布団を敷かずに寝るようになりました。当時住んでいた部屋は畳敷きだったので、畳の上に直接寝てました。畳も濡れるのはよくありませんが、布団が濡れるよりはましかな、と思って。

尿意ってだいたい段階がありますよね。

  • うーん? おしっこしたい? かな?
  • おしっこしたいかも。
  • おしっこしたいな。
  • 早くトイレに行きたい。
  • 早くトイレに行かねば!
  • そろそろヤバい。
  • かなりヤバい。
  • ちょーヤバい!
  • もー限界!

おじさんの場合はこんな感じかな? 「おしっこしたい」と思いはじめてから「もー限界!」まで、だいぶ間があるんですよ。通常は。「もー限界!」を突破すると洩れる訳です。

通常は尿道括約筋を制御することで「ぎゅっと締めて」我慢して、我慢できている間にトイレに駆け込んでことなきを得る訳ですが、この時期のおじさんは「おしっこしたい……かな?」と感じた途端に「ぐーっとこみ上げてきて」、「ぎゅっと締め」ているつもりなのだけど実際は締まってなくて、溢れ出してしまっていたのです。

自分で自分の身体を制御できない。つい先日まで無意識にやっていたことが意識してもできない。この絶望感がわかりますか。老いてから自身で感じる惨めさって、これなんですよ。

デヴ復活

手術を終えて帰国した後も持病のうつはあまり状態がよろしくなかったのですが、この排尿障碍によって余計に調子が整わなくなっていました。そのせいか、まともに食事ができなくて、食べられるものはなぜかポリコーンだけ。ほかのものはほぼ喉を通らない状態。

ポリコーンてのはポップコーンとは違って、ジャイアントコーン(という種類の、粒が大きなとうもろこし)でつくったポン菓子みたいなやつです。甘いやつ。

……て、若いみなさんは「ポン菓子」って知らないか。そっかー。


ポン菓子 製造の様子【注意:大きな音が出ます】このポン菓子の材料は米です。

ポリコーンしか食べられなかったのに、ストレスからか過食症状が出ていまして、外出もできずに1日中ポリコーンを食べているという毎日でした。そしたら、1箇月で30kg増えました。びっくりするよね( ゚д゚ )

3度目の渡航前に、おじさんは病院からの指示でBMI25以下になるように減量しました。このブログでもお話ししましたね。その際にぎりぎり60kgを切るくらいまで落としたのですが、帰国してから90kgに成長しました。

おじさん身長は低いです。それなのに90kgもあるところんころんです。トイレで尻を拭くのがちょっと難しくなりました(まだ拭ける)。

そのほかにも足の爪を切りづらくなるとか、自分の世話を焼くのがいろいろと難しくなってくるし、内蔵や関節への負担も大きくなるので、みなさんはおじさんのように過剰に肥らないよう気をつけてください。

今度は出ない

春に陰茎形成術を受けて、初夏に帰国。腕の傷ぱっくりやら尻の巨大な水ぶくれにおののいているうちに排尿障害が起きて、おしっこだだ洩れの危険とせめぎ合いながら夏が過ぎ、秋を迎えた辺りに、次の異変が起きます。

排尿できない。おしっこを出そうとしても出ない。

みなさん排尿というのは意識してやっていないと思いますが、自分がやるときのことをちょっと思い出してみてください。尿道周辺の筋肉からちょっと緊張を解くような、緩めるような感じにして、下腹にすこーし力を入れるとおしっこが出てきますよね。

この手続きを取っても出てこなくなったのです。

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じゃ、だだ洩れの心配はなくなったかってーと、んなこたーない。不意に尿意が来て出ちゃうことはある。だから紙おむつは手放せない。「こみ上げてこない尿意」というのも起きるようになって、そのときはトイレに行って出そうと努力する訳ですが、出ない。

がんばって力むと出る。ちょうど排便するときの感じです。あれくらいお腹に力を込めないと排尿できない。尿線はさらに細くなって、そうめんくらい。ちょろちょろー、って感じですね。

泌尿器科で相談すると、膀胱の緊張を緩める薬と、尿道が広がりやすくなる薬を処方してくれました。しばらく服みましたが症状の改善が見られず、同じ効用の別の薬を服んでみたりもしましたが、劇的な改善はなし。

手術でつくった尿道がおかしくなってんじゃね?てことで内視鏡検査もしてくれました。ちんちんの先から細ーい管を膀胱まで挿し込む検査です。細ーい胃カメラみたいなものと思ってもらえるといいのかな。この器具は膀胱鏡と言います。

膀胱鏡検査

下半身すっぽんぽんになって、分娩台みたいな開脚診台にすわって砕石位を取ります。股間周辺を消毒して、尿道口から麻酔剤を注入。尿道に管を突っ込むと痛いからね。痛くないように軽い麻酔をします。

麻酔が効いてきたら、生理食塩水を注入しつつ、膀胱鏡を挿入します。尿道の中を異物が通るのが何となくわかります。上手なお医者がやるとあまり痛くないのですが、乱暴なお医者もときどきいます。ひー ((( ;゚Д゚)))

おじさんが診てもらっている泌尿器科では、開脚診台の隣りにモニタを置いてくれていて、患者も見ることができます。赤くて暗いトンネルの中をカメラが進んで行くのですが、毛が生えています。尿道の中に毛が生えてるのです。

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最初の記事から順番にこのブログをお読みくださったみなさんはおわかりのことですが、おじさんのちんちんはおじさんの左腕の内側の組織でできています。皮膚と筋肉とを切り取ったものを「皮弁」と言いますが、内腕から皮弁を取って、ちんちんを形成しました。

だから尿道にも毛穴があって、体毛が生えている訳です。検査してくれた主治医曰く「将来、尿道の中に毛玉ができるかもね」。

えー、毛玉で尿道が詰まっておしっこ出なくなっちゃったりするの?とか考えて怖くなりましたが、術後7年経った現在(2020年)、まだそんなことにはなっていません。

で。そろそろとカメラは進んで行くのですが、ちょうど形成した尿道とおじさんが持って生まれてきたオリジナルの尿道との接続部辺りで、カメラは進めなくなりました。

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継ぎ目がまっすぐではなく、縫合痕がはっきりしていて、まだ縫合糸が見えている。カメラを突っ込むと縫ったところが破れてしまうかもしれないから、ここまでにしとくね。という主治医のご意見。

て訳で膀胱鏡検査はそこまで。「手術でつくった部分はきれいにできてます」と主治医は言っていましたが、そこから奥の部分はどうなっているかはわからず。取り敢えず「おしっこは出るはず」という見立てです。うーん?

さらに難関

おあー、ずいぶん長文になったのに検査までしか書いてない!

この後! この後おじさんはさらにヒサンなことになるんですよ。だからね、おじさんは「ちんちんつくる手術を受けたい」て言う人には「やめときな?」て言うようにしてるんですよ。何を言われたってほんとに手術が必要な人は受けちゃうんだけどね。

という訳で、泌尿器周りのヒサンなお話はまだまだ続きます。

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