おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

そろそろおじさんになる頃〔個人史26〕

ごきげんよう島田珠代姐さんと同い年のおじさんです。大好き珠代姐さん。

おじさんの人生の転機である精神科入院とその周辺のお話をして参りまして、そろそろそれもおしまいに近づいております。そして、そろそろ「おじさん」と呼ばれる年令になりつつあるので、「おじさんがおじさんになるまでの話」も終盤ですな。

あと何回更新するかまだわかりませんが、気長にお付き合いくださいな。

退院後の充実期

半年間の入院を2回終えたところで、おじさんは概ね快復しました。しかし、入院が半年×2で1年、入院と入院の間のまる1年間は療養生活だったので、退院して直ぐさま社会復帰できるかと言うと、そんな訳ないのです。1回めの入院を終えて帰宅後直ぐに仕事をはじめようとして具合を悪くした実績もありますし、焦りは禁物です。

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まずは充分に体力を回復させねば、ということで2回めの入院中からやっていたウォーキングを退院後も継続。入院中に独学していたHTMLをもっと使えるようになろうとweb制作の専門学校(短期コース)に通ったり、そこで学んだことを片っ端から使って個人サイトを制作したり、のんびりとではありますが意欲的な退院後を過ごしていました。

このとき制作したwebサイトが地元のコンテストで入賞したり、サイトで公開していたプロフィールや文章作品を見たある編集者から「性同一性障害をテーマにした小説を書いてほしい」というご依頼をいただいて、とあるメディアで1年間連載したり、割りと充実した時期を過ごしました。

ゲイエロ小説のおかげ

この連載が終わった後、また別のメディアで連載が決まりました。今度はゲイをメインにした小説です。と言っても同性愛者の苦悩を描いた社会派なやつではなく実用的なやつ、つまりエロ小説です。

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実はうつ病で倒れる少し前からそういったものを書きはじめていて、雑誌に掲載されたりもしていました。今度はwebメディア上でそういった需要があって、400字詰原稿用紙30枚程度の短編小説を毎月1本書くことになったのでした。この連載が、おじさんのもとに飛び込んできた幸運だったのです。

約3年間続いた連載と並行して、当時発行されていたゲイ雑誌3誌のうちの2誌に投稿を続けて、投稿作はほぼ確実に掲載していただいていました。そうしていただいた原稿料を貯金して、そのお金でおじさんは2005年9月にタイへと渡航します。そうです。エロ小説の原稿料がおじさんの性別適合手術の費用になったのです。

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ゲイエロ小説というものがなければ、おじさんにそれを書かせてくれる媒体がなければ、おじさんはきっと性別適合手術を受けられなかった。だからおじさんはゲイのみなさんに、ゲイエロ小説に、とても感謝しています。ゲイ万歳、エロ万歳。

このブログを書いている現在は、連載させてもらっていたwebサイトも、掲載してくださったゲイ雑誌も、もう存在しません。雑誌という媒体が生き残るのが難しい時代ですし、webメディアも立ち上げられては消えていくことを繰り返していて、世は無常だし万物は流転するんだなー、と身にしみて感じています。

それからのおじさん

性別適合手術を受ける顛末は、当ブログの最初の方に書いてある通りです。大変だったけど、滅多にできない経験ができたし、人に話しておもしろがってもらえるし、泌尿器に軽く障碍が残ってはいるものの普通に生活できているし、手術してよかったんじゃないかな、と思っています。

タイで手術を受けたのは35~43歳の頃(予定では30代のうちに終わるはずだった)で、最後の手術からもうすぐ10年になろうとしています。もう一度同じことをしようとしても、気力も体力もとても足りません。よくあんなことしたもんだと自分で思っています。

タイでの最後の手術を終えた翌年は、後遺症の排尿障碍と尿道狭窄に悩まされることになります。この辺りのお話も既に当ブログには書いておりますね。おしっこが思わぬときに出てしまったり、まったく出なくなったり、手術や検査が痛かったりで散々でした。が、これも人に話すと結構おもしろがってもらえるので、よかったです。

性別適合手術を終えたのが2013年、帰国後に尿道に出た後遺症の治療を終えたのが2014年。それ以降は特に大きなできごともなく……ということもないかしら。2回救急車で運ばれたり、うつ症状にアップダウンがあるのを除けば、特筆することもなく。ああ、仕事でとてもうれしいご依頼をいただきましたな。

では、次回からは救急車の経験と、うれしいご依頼の仕事のお話をしておきましょう。

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