おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

松本市でまぶたを切る〔1〕

ごきげんよう、真冬でも身体から湯気が出るほど汗っかきのおじさんです。

まず宣伝です。おじさんの2本目の小説がKindleで出ました。タイトルは『あの日、階段の向こうに見た大きな』。400字詰原稿用紙にして40枚程度の短いお話で350円とお安いですので、どうぞよろしく。

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さて。

性別適合手術の話が終わってから、ついでだって言うんで、おじさんがこれまで経験した性別適合手術以外の手術のお話をしています。2つだけかと思っていたら、もひとつ忘れてました。これもお話ししておきますね。何たってついでだから。

おしまいは眼瞼下睡のお話です。この手術こそひどいめに遭っているのに何で忘れたんだろう。

眼瞼下睡は形成外科の領域

「眼瞼下垂」って聞いたことありますか?

どんな疾患かと言うと、読んで字の如くまぶた(=眼瞼)が下に垂れてくるのです。「まぶた」をおじさんはいつも「目蓋」と書くのですが、「瞼」一字でも「まぶた」と読みます。むしろこちらの方がポピュラー。

目蓋は「眼瞼挙筋」という筋肉で持ち上げています。ところがこの眼瞼挙筋というのは加齢とともに伸びてきて、充分に目蓋を持ち上げられなくなることがあるんです。

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このために、しっかりと目を開けていられなくて視野が狭くなるなど、日常生活に支障が出る場合は、眼瞼挙筋を一部切除して目を大きく開けられるようにする手術が必要になります。

おじさんはもともと目が細いのですが、視野が狭くて困るというほどでもありませんでした。しかし知人が眼瞼下垂の手術を受け、視界が開けた上に以前から悩まされていたうつ症状が明らかに改善されたと言うのです。うつ病とまでは行かないけれど、うつ傾向があったのですね。

知人が調べて行きついた話をもとに、さらに自分でも調べてみたところ、眼瞼下垂を原因としてうつ症状が出ることもあるとのこと。そのほか、筋緊張性頭痛・片頭痛・肩こり・パニック障碍などを引き起こすこともあるそうな。これらの症状というのはうつと併発しやすいですね。おじさんにもあります。

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思い当たる人は、セロテープでもマスキングテープでも養生テープでもいいので、その類いのもので目蓋を額の方へ引っぱり上げて一時的にでも固定してみてください。目を大きく開けるようにね。しばらくその状態で生活してみて、思い当たる症状が改善されたら手術を検討してみてもいいかもしれません。

おじさんもやってみました。うつ症状については正直「?」という感じでしたが、視野が広くなるのは快適です。だからおじさんも、目蓋が下垂していることはしていたのでしょう。それに、全快はしなくても、多少でもうつが改善されたらいいなあ、という希望もどこかに抱いていたのだと思います。

いざ気軽に信州へ

眼瞼下垂の名医が信州大学医学部附属病院におられるというので、関西在住のおじさんは行ったんです、はるばる長野県松本市まで。その名医とは眼科ではなく、形成外科のお医者です。仮にM医師としましょう。

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これを決意したときというのが、はじめてタイへ性別適合手術のために行って、帰国した辺りなんですな。飛行機で片道5時間のタイまで行ったんだから、長野県なんて遠くないでしょ。て感じで、ホイホイっと。

でも、地元から電車で大阪市内まで出て、そこから高速バスに乗って行ったんですが、片道7時間前後かかるんですな。タイより時間かかってるじゃん。しかも計3回行くことになるんですよ。初診・手術・予後診察のために。

はじめて松本市に言ったのは、春先でした。3月の終わり。夜行バスで朝早く着いて、病院へ行くまでの時間をネットカフェでつぶしました。信州の朝はひんやりしたなあ。

形成外科のM医師は眼瞼下垂について図を書いて説明してくださり、眼瞼下垂とうつの関わりについても話してくださいました。そして、乳児用の耳で測る体温計によく似た機械をおじさんの耳に用いて、「鼓膜の緊張度」というものを測ってくれました。

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▲医者の字というのは例外なく読めないね。

計測値などは見せてもらえませんでしたが、M医師が仰るにはおじさんの緊張度は「戦場の兵士と同じくらい」だそうな。結構リラックスしているつもりだったんだけどな……?

つまり、おじさんのリラックスしている(つもりの)状態が、一般的に見ると過度の緊張状態だということです。極限の緊張状態がが平常なのだから、そりゃあうつ病にもなるますわな。と、妙に納得したおじさんでした。

これも眼瞼下垂を解消することで緩和されるでしょう、というM医師の見立てで、そんなら手術しましょうと、この初診時に手術日を決めました。M医師の手術は人気のようで、予約が取れたのは8月。お盆明けです。

て訳で、一旦帰郷して、再度夏にやってくることになりました。夏の信州は心地よさそうです。

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記録によるとこの年は2006年です。モーツァルト生誕250年、トリノ冬季五輪が開催された年で、荒川静香選手が金メダルを獲得した瞬間をおじさんは現地時間で見ていました。

トリノ五輪の翌月に信州大学医学部附属病院で初診、国際天文学連合が「冥王星は惑星じゃないことにします」と決める1週間ほど前に、おじさんは手術のため再度信州に赴くのです。

手術とその後については次回に。

性同一性障害関係のお話目当てで当ブログのお読みのみなさんはそろそろつまらなくなってきた頃かと思いますが、眼瞼下垂のお話の次はおじさんの生誕から性別適合手術に至るまでのお話をする予定でおりますから、も少しお待ちくださいな。

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