おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

退院→再入院→退院

ごきげんよう、高重量を挙げられるようになってうれしい勢いで20kgのバーベルプレートを2枚買ったものの、プレートはでかいわ自宅は狭いわでちょびっとだけ後悔しているおじさんです。15kgをもう一ト組にしておけばよかったかナ☆

さて、陰茎形成術と再手術を終えて、尿バッグをつけたままながら何とか退院したおじさんですが、予後を見るためにあと2週間ばかりバンコク市内に滞在しなければなりません。

再入院も控えているおじさんの院外生活はどんなものなのか。退院してからのバンコク滞在をお話しするのははじめてですね。ではでは、はじめてみましょう。

マンション住まいはただぐったり

前回渡タイ時と今回は同じアテンド会社を利用しています。はじめての渡タイ時に利用した会社は退院後の滞在にホテルを用意してくれましたが、2回目・3回目に利用した会社は滞在用のマンションを自前で所有していて、それを貸してくれます。

マンションとは言っても、2日に1回は必ず掃除担当の人が来て掃除と飲料水や冷凍食品の補充をしていってくれます。だから体調がすぐれず、一歩も外出できないとしても生き延びることはできます。

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▲滞在マンションの周辺の様子(おじさん撮影)。

担当アテンドさん(おじさんの場合はNさん)にお願いすれば、食事や医療品などを買ってきてもらうこともできます。もちろん、自分で外出して買いものできるなら、そうすることもできます。

が。

初渡タイ時からずっとお話ししていますように、おじさんはうつ病持ちで、かつ渡タイ前1ヶ月から帰国まではうつ病の薬を服むことができないのです。つまり、その間ずーーーっと具合いが悪い。

しかも、尿バッグはつけたままだし、再入院の予定はあるし、その結果次第では滞在延長しなければならなかったり、そうするとビザを取得しなければならなかったり滞在料金がさらに必要になったりで、不安の材料はたくさんあります。

その状態で生き生きと生活できるはずもなく。

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▲本文の内容とは関係なく、マンション近くのコンビニで買ったタイのプリッツ

おじさんは毎日1日中ぐったり横になっていました。空腹感も感じなくて、時間が来たら服薬のために食べるという感じでしたが、食べるのもしんどい。そのうち食べものが喉を通らなくなってきます。

Nさんのおかげ

しばらくは入浴不可だったので身体を清拭しなければなりませんでしたが、おじさんの左腕は包帯ぐるぐるで濡らしてはいけませんし、目下リハビリ中です。という訳で、清拭はアテンドのNさんがしてくれました。

また、手術で形成したちんちん周辺は毎日、洗浄・消毒をする必要がありますが、これもNさんがしてくれました。自分ではなかなか手も届かない場所もあって(会陰部の消毒などは難しいです)、これは大変助かります。

生理食塩水で拭って、消毒液を含ませた綿棒でさらに拭って、ガーゼで患部を覆います。これを毎日してくれたのです。

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▲消毒に使った綿棒。でかい。

おじさんはこのときほんとうに動けなくて、エレベータで3階から1階に降りて、玄関の正面にあるごみ集積所に3日に1回程度ごみを捨てに行くという、これだけのことすらできずにいました。

だから食事の調達も自力ではできなくて、Nさんに買ってきてもらっていました。タイの屋台の味を楽しめたのは、Nさんのおかげです。タイ料理もタイ中華も、たくさんは食べられませんでしたが、味わうことができたのはとてもよかった。

ちょっとびっくりしたのは、タイのKFCです。「これはからくないよ」と言ってNさんはオリジナルチキンを買ってきてくれましたが、おじさんはひーひー泣きながら食べました。オリジナルチキンが既にからいのです。

タイのKFCにはレッドホットチキンもあるのですが、どれだけからいんだろうと怖くなった覚えがあります。おじさんは唐辛子のからさに極度に弱いんですけども。

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Nさんはおじさんを担当してくれていましたが、おじさんだけを担当していた訳ではありませんでした。ほかにも担当している患者がいるんです。にもかかわらず毎日1回は顔を見せてくれて、買いものをしてくれて、身繕いまでしてくれたNさんには感謝しかありません。タイの方に足を向けては寝られません、ほんとに。

今度は泌尿器科に入院

さて、再び入院です。予定では短期間なので、ほとんどの荷物をマンションに置いたまま、先の退院時に予め告げられていた日に病院に向かいます。

まずは執刀医先生に手術箇所を診てもらい、「順調です」とお墨付きを頂きます。予後は良好のようです。

その後、病室に入って入院着に着替え、水をたくさん飲みます。今回の入院で排尿がうまくできないと、滞在延長になるのです。無事の帰国のために、小水がたくさん出るように水をたくさん飲みます。

そして、カテーテルと尿バッグが取り外されます。自力で排尿できるかどうかを見るためです。

しかし管がなくなって軽やかだね!という訳にはいかないのです。膀胱まで挿入されたカテーテルは取り去られましたが、今度は尿道の長さのカテーテルを挿入しなければならないのです。

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少なくとも今後半年は、形成した尿道には常にこうしてカテーテルを挿入しておかなければなりません。腕にトンネルをつくる手術をしたときもそうでしたね。手術をした穴、今回の場合は尿道が塞がってしまわないように、カテーテルを留置しておくのです。

じゃ、おしっこするときどうするの?

トイレのたびに外して、また挿し込むのです。排尿前に外して、終わったらカテーテルを生理食塩水で洗って、ジェルをつけて、再び尿道に挿入・留置しておくのです。トイレに行くたびにこれをしなければなりません。うわーめんどくせえ。

しかし、めんどくさいからと言ってこれをやらないと、尿道が塞がってしまうかもしれません。尿道が塞がるとどうなるかというと、おしっこが出せなくなります。おしっこが出せないとどうなるか。みなさんご存じですか。

おしっこを身体の外に出せないと、死にます。

泌尿器周りの病気や障碍を笑う人は割りと多いのですが、笑いごとではないんです。生命に関わることなんです。だから、こうして再入院して排尿が可能か否かを診ようとしているんです。

今回の入院でも手術明けと同じように、トイレに行く際はナースを呼ぶように指示されます。たくさん水を飲んで、尿意の訪れとともにナースコール。ナース立ち会いの下で立位排尿します。

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▲病室の冷蔵庫には水だけでなく、ファンタも常備されてるよ(硝子瓶)

出た。

トイレに立つと、スムースに排尿できました。やったね! 次も、そのまた次も滞りなく排尿できました。……何でこの間は出なくなったんかなー?

それはわからないままでしたが滞りなく排尿できたので、おじさんは翌日には退院して、その3日後には帰国の途に就くことができたのでした。何とかビザなしで滞在できる範囲で済みました。いやー、ひやひやしたなー。

性別適合手術終了

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▲ヤンヒー病院退院時にくれるアンケート用紙。

これですべての性別適合手術が終わりました。万々歳ですな!……なんて訳にはいかないのです。帰国後がすげー大変だったのです。

次回からは帰国後のケアや性別適合手術の後遺症についてお話しして参りましょう。「性別適合手術が全部終わったら生まれ変われる」とか「すべてが変わる」とか「人生薔薇色になる」とか未手術の人が言うのをよく聞くのだけど、それ夢とか幻に過ぎないからね(きっぱり)。

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