ベッドの上の人
ごきげんよう、歌を聴きながら何らかの作業をしていると突然、曲の一部分だけを声に出して歌うことがあるおじさんです。
先日『夢のENDはいつも目覚まし!』を聴いていて、近藤房之助氏のシャウト「りんりーん!」部分だけを声に出してしまい、自分でびっくりしました。
さて、ブログではようやく陰茎形成術を終えたおじさんですが、これからが大変なのです。術後のお話に行ってみよ!
寝たきり動けないマン
手術の日から10日間ばかり、寝たきりでした。ずっとベッドの上。食事どきはベッドの背を起こして身体を起こしてはいましたが、立ち上がることはありません。点滴はつながってるし、尿道カテーテルもつながっていますから、ベッドから離れることもできません。その必要もないし。
左腕は皮弁を切除して、大きな傷ができています。とは言っても、手術の麻酔から覚めてみれば腕は既に包帯ぐるぐる巻きだったので、おじさん自身も傷を見たことがありません。ギプスで固定した上で包帯を巻いてあるらしく、腕がごつごつしています。
前回の手術でトンネルを開けたときと同じように、腕の下に枕を敷いてくれていて、寝た姿勢はいくらか楽ではありますが、ほかの部分がしんどいので楽さ加減があまり感じられません。
前回のブログでお話しした通り、おじさんの股間にはカバーがついていて、つまりそれはさわったり動かしたりしてはいけないということ。つくったばかりのちんちんのかたちが整うまで(縫ったところがくっつくまで)は、そっとしておかなければならないのです。
ということは、寝返りとか仰向けから姿勢を変えるとかできない訳です。ずっと同じ姿勢。そうするとね、尻が痛くなるの。寝ても起きても尻は体重を支えてるからね。これがつらい。
腕の包帯は指の第2関節くらいまで巻いてあって、力も入らないし「グー」もできない状態。これじゃものも持てないじゃん!
だけど、持たないといけない。右手だけで食事したりしてるとナースに「両手使え」って叱られる。動かせないように見えるけど、動かせば僅かに動くのでした。
安静しながらリハビリテーション
腕の内側を、いくらかの筋肉や神経ごと大きく切り取っているので、左腕は動かしづらいです。しかし、動かさないと動くようにはならないので、少しずつ使うようにします。
最初は、ペットボトルのキャップを開けるのにも一ト苦労します。ボトルをしっかり掴めない。フォークやら食器を持つのも最初はただ「指に乗せてる」感じ。でも、意識的に使うようにしていれば、1箇月ほどで「グー」ができるようになります。1年もすればダンベル運動もできるよ。
そして今回初登場の器具。
これは呼吸器のリハビリテーション用器具です。青いホースの一端を口にくわえて、思いっきり吸います。吹いちゃ駄目。吸う。吸引する。
すると、中に入っている球体が浮いてきます。色の薄い球から濃い方へと少しずつ重くなっていて、最初は白っぽい球しか浮いてこなかったりしますが、毎日毎日やっていると、3つとも浮くようになってきます。3つとも透明容器の一番上まで浮くように吸うことができるようにがんばります。
あとから考えれば、この球体が3つとも吸い上げられないってどれだけ弱ってたのよ?!というくらいの強度です。この器具は入院費用に含まれているので退院時にお持ち帰りできます。いまもおじさんの家のどこかに片付けてある……んじゃないかな? 帰国後しばらく吸って遊んでたから。
ベッドの上生活
先ほど述べましたように、10日ばかりはずっとベッドの上です。何をするのもベッドの上。朝はナースが洗面具を持ってきてくれて、顔を拭いてくれます。その後はハブラシを渡されるので自分で歯を磨きます。
口の中をすすぐときはナースがベースン(空豆型のトレイ)を持っていてくれるので、そこに水を吐き出します。午後からはやっぱりナースが来て身体の清拭をしてくれて、入院着の着替えやシーツの交換も、おじさんが寝てる状態で器用にやってくれます。
身体は清拭してくれるけど、洗髪はしてくれない。おじさんは当時後ろ5厘のスポーツ刈りだったからさほど気にならなかったけど、長髪の人はべたべたになってしまったかも。
先ほど述べたように、食事もベッドの上でします。食べるのもベッドの上なら、出すのもベッドの上です。小水は尿道カテーテルから勝手に出て行き、ベッドの傍に固定した尿バッグにたまっていくので、部屋に来るナースが気をつけて処理してくれます。では、便はどうするか。
寝たまま出すのです。
これが寝たまま用便器。仰向けに寝た姿勢で尻を持ち上げて、ベッドと尻の間に差し込んでもらいます。そして、仰向けに寝たまま気張ります。
寝たまま排便って、最初は結構難しいんですよ。だって、寝た姿勢でうんこ出すなんて赤ん坊のとき以来でしょ? 赤ん坊のとき、どうやって出してたかなんて憶えてないでしょ?
普段すわってしていることを寝た姿勢ですると、力の入れどころがわからなくなって、なかなかうまくいきません。背中や腕にシーツが触れている感覚があるので身体が「ここで出してはいけない」と感じてしまうらしく、そのコントロールも難しい。
という訳で、ベッド上での排便というのは慣れるまでは難関です。
尻の下に便器を差し込んだ後、ナースは一旦退室してくれるので、出るものが出てしまったらまたナースコールで呼びます。出したものを処理してもらいます。
10日ほどこんな生活が続きます。
腕、解放さる
手術の日から数えて9日目、点滴が外れました。これで右腕は自由です。そう、この日まで右腕にはずっと点滴の管がつながっていたので、そのまま食事したり水を飲んだりしていたのです。
そして、左腕も包帯を取って、ギプスを外して、一旦洗浄します。おじさん自身はベッドに寝た姿勢でベッドの外側へ左腕を伸ばす恰好になっていたのですが、大勢のナースと執刀医が腕を取り囲んでいて、どんなことをしていたのかは見えませんでした。
水洗いしてるんだろうな、くらいのことしかわかりません。ベッドのわきには洗浄用の容器が置いてありました。
これで左腕もすっきり!……ではなく、再び包帯ぐるぐる巻きになります。腕を固定するギプスが外れただけで、包帯まで外れるわけではないのです。実はまだ傷がふさがっていないので。
手術してからおじさんはまだ自分の左前腕を見ていません。どうなっているのやら。
手術の内容としては、腕は皮弁を切り取って、その跡地には尻からはがした皮膚をはりつけてあります。尻の皮膚はうすーくはがしてあるので、尻から皮膚がなくなることはありません(ただし、弱った状態にはなっています)。
▲腕に貼る用の皮膚をはがした後の尻。術後1年くらい。
ギプスが外れたので、動かせる範囲が大きくなっているはずです。この日から手首を曲げたり、腕を内捻させたり外捻させたりという動きの練習をはじめます。意識して動かすようにしないと、できるようになりません。リハビリリハビリ。
そして翌日、手術の日から数えて10日目に、ようやく尿道カテーテルが抜去されます。カテーテルが外れて、自力でトイレに行くのが大変だった! どう大変だったか。このお話は、次回に。
▼クリッククリックスロースロー。