おじさんがおじさんになるまでの話

おじさんは昔おじさんではなかった。それどころか、男の子でさえなかった。男の子に生まれなかったおじさんが、いかにしておじさんになったかを少しずつお話ししていきます。

嗚呼、割腹美少年…

ごきげんよう、心霊写真の例のナニが写っている部分が○で囲ってあってもナニが「おわかり頂けない」おじさんです。

f:id:oji-3:20200422150127p:plain

乳房切除術(おっぱいを切り取る手術)、性ホルモン注射と、おじさんが経験してきた性同一性障害の治療についてお話ししてきました。ここまでのお話は、何と1990年代のお話です。20年以上前ですね。本ブログをお読みの人の中には、まだ生まれていなかったという人もきっとおられるのでしょう。

だから、おじさんの話は、これから性同一性障害の治療を受けようという人の参考になるかと言うと、そうでもなさそうです。医療は日進月歩で進歩しておりますので、おじさんが体験したコトなんて「古えの治療術」なんじゃないかな。

次のお話は、ようやく2000年代のお話です。お腹を切って中身を取り出した話だヨ!

でも、お高いんでしょう?

世知辛いお話になりますが、性別適合手術という性同一性障害の外科的治療は、とってもたくさんのお金がかかります。

2018年から性別適合手術にも一部、公的医療保険が適用されるようになりましたが、おじさんが手術を受けた頃は全部自費で、現在よりももっと手術をしてくれる病院が少なかったのです。片手で数えられるくらい。

病院は少なかったけど手術を受けたい人は割りとたくさんいて、国内で手術を受けようとすると、おじさんのような女性型の身体を男性型に訂正したいトランス男性の手術は全部で300万円ほどかかるとのことでした。病院の人に教えてもらったから、多分間違ってない。

手術「だけ」で300万円くらいかかって、そこに入院費用やら薬剤代やらがかかってくるので、諸々合わせると約500万円なのだそうです。この高価な手術は、しかも手術しようと決まってから少なくとも半年は待たなければならなかったのです。

翻って。

f:id:oji-3:20200422144440p:plain

海外へ行くと、同じ保険が効かない手術でも、国内よりも安い費用で済んだりしたのです。しかも待たなくていい。アメリカ、台湾、カナダなど手術できる病院はいくつかの国にありましたが、中でもタイは手術が「早い・安い・うまい」と言われていました。牛丼かよ。

安いと言っても、全部済ませるならやっぱり数百万円はかかる訳で。あまり誇れることではないのですが、おじさんは社会にあんまり適合してなくて、うまく社会の一員として働くことができずにいました。実はいまもそうなんですけど。

て訳で、収入もあまり得られなくて、その日暮らしのようなものです。日々の生活を成立させながら手術費用とと術後の休養期間の生活費用を貯金するなどということは、ほぼ無理。半分以上諦めていました。

ところが三十路も半ばに差しかかった頃、運よく高収入の仕事を得ることができまして、ここぞとばかりに貯金しました。それで2回目・3回目・4回目のの手術を受けることができたのです。

からだの性を訂正する手術の種類

女性型の身体を男性型に訂正する手術は、人によって受ける回数が違います。本人がどこまで望むかによるからです。

「おっぱいがなくなりさえすればいい」という人なら、1回でおしまいです。「おっぱいはいらない、子宮・卵巣もいらない」という人なら手術は2回。おっぱいと子宮・卵巣の手術を1回で済ませる病院もどこかにあったようですが、それは医者も患者もしんどいに違いありません。

性別適合手術を受けたい人は誰もが「おっぱい切る+子宮・卵巣取る+ちんちんつくる」のセットで手術を受ける訳ではないんです。「ちんちんなんか別にいらん」という人もいるので、そういう人はちんちんをつくる手術は必要ないんですね。

f:id:oji-3:20200422145421p:plain

おじさんはセットで受けました。おっぱいを切って子宮・卵巣を取ってちんちんをつくった訳です。ちんちんをつくるためにはまず尿道を延長する手術と、ちんちんの材料になる「皮弁」というものをつくる手術を、ちんちんをつくる手術の前に済ませておかなければなりません。尿道延長術と皮弁は1回の手術でできます。

だからおじさんは次の手術を受けたことになります。

  1. 乳房切除術 : おっぱいを切り取る
  2. 内性器摘出術: 子宮と卵巣を切り取る
  3. 尿道延長術・陰茎形成準備術: 尿道を延長する、皮弁をつくる
  4. 陰茎形成術: ちんちんをつくる

1のお話はこのブログの最初にしたので、次は2の「内性器摘出術」のお話をしましょう。

「内性器」というのは身体の中にある性器、つまり子宮や卵巣のことです。現在では腹腔鏡手術や内視鏡手術も選択肢に入っていますが、おじさんが手術を受けた頃は開腹手術しかありませんでした。

という訳で、生まれてはじめて腹をかっさばいての手術を受けたのです。嗚呼、割腹美少年(おじさん美少年じゃないけど)。

ことの次第は次回から。次回もおたのしみに!